大戦下、米国の強制収容所でも仏教は守られた

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オンラインによる講座で、主催者側の質問に答えるウィリアムズ教授

 仏教が米国ではどのような状況にあるのか―。米国南カリフォルニア大学教授で曹洞宗の僧侶でもあるダンカン・ウィリアムズ氏が日系移民の立場から11月6日、武蔵野大学仏教文化研究所主催の公開講座で話した。

 

 コロナ禍による渡航制限で訪日できず、同大武蔵野キャンパス(西東京市)の会場と生中継する初のオンライン講座。

 

 ウィリアムズ教授は昨年から米国内で仏教寺院の破壊行為や落書き、高齢のアジア人襲撃事件が相次いでいると写真やビデオを見せた。

 

 今年3月、ジョージア州アトランタで起きたマッサージ店連続銃撃事件では犠牲者のうち3人が仏教徒であったことから、その後の合同法要のライブ配信を含め米国における仏教に広く注目が集まったという。

 

 このような人種差別と宗教差別は「19世紀後半から連綿と続くアメリカ社会の根深い問題」と教授は指摘。米国初の仏教コミュニティーは中国人の移民によるものであり、1882年に制定された「排華移民法」(中国人移民排斥法)は、特に白人政治家が中国人移民の制限を求め、さらにキリスト教国のイメージの維持を目的にしていた、と述べた。

 

 大衆雑誌、風刺画、ポスターなどによって仏教やアジア人は危ないとのイメージが一般人にも広まった。

 

 宗教の差別は第2次大戦下の強制収容にはっきりと見られる。米連邦捜査局(FBI)が作成した有事の際の敵国人ファイルで、「仏教僧侶は国家への最も危険な人物」と明記。政府はこの時期から反仏教の姿勢を強める。

 

 収容所は30カ所以上あり、老若男女問わず12万5千人が収容された。持ち物はスーツケース一つ分のみ。それでも仏教が続けられたのはなぜか。

 

 砂漠で拾った木材で仏壇を作り、食事で出るモモの種を集めて数珠に代えた。個人レベルで仏教の勉強会も活発に行われた。先祖と新しい霊を慰める盆踊りは、改宗のプレッシャーの中で「最大の仏教儀礼」だったという。

 

 教授は、最近の反アジア・反仏教感情が高まる国で、どうしたら仏教を維持できるかについて、「収容所からのメッセージにヒントがあるのではないか」と結んだ。

 

 主催者側の質問に対し、ウィリアムズ教授は近年の米国の仏教の動向について「マインドフルネス(仏教的瞑想)」の人気上昇と、アジア系や日系人のほか黒人、白人、ラテン系と多くの人種が入ってきていることを挙げた。政権交代による状況の改善については悲観的な見方を示した。