今年の初笑いは1月15日、三鷹で林家たい平独演会。三鷹行きバスのダイヤが12月に改正されたのに気付かず、出発時刻がいつもより10分以上遅くなってヒヤヒヤしたが、日曜日のせいか乗客が少なく、停留所を次々通過。三鷹駅でのバス乗り継ぎも順調にいき、余裕を持って会場に入れた。
たい平独演会は昨年、新型コロナの感染拡大で急きょ中止、希望者はそのときのチケットを1年持ち続けての入場となった。
番組前半は、たい平の長男で2番弟子の林家さく平が落語「つる」、1番弟子の林家あずみが三味線漫談、たい平が「粗忽(そこつ)長屋」を演じた。行き倒れの遺体を巡り、そそっかしい長屋の住人たちの連鎖がなんともバカバカしく、客席の笑い声も連鎖した。
後半は講談師・神田茜(あかね)が江戸時代の俳句の天才少女の出世と父への情愛を描いた「秋色桜(しゅうしきざくら)」を語り、たい平が「藪(やぶ)入り」で締めた。
たい平が前の高座と同じ着物で現れたのには少し驚いたが、「用意した着物を玄関に置き忘れてきた」との釈明があった。
「藪入り」は明日1月16日であるというタイミングで掛けたと言う。藪入りとは、商家に住み込みの奉公人が、身なりを整えてもらい土産も持たせてもらって実家に帰るという習慣。今では死語かもしれない。サゲにつながるネズミ捕獲の懸賞金やペストの流行も今や昔の出来事だろう。
そうした知識はおぼろげであっても、3年ぶりに帰省する息子を待ち焦がれる父親の心情と言動には素直に共感できた。いや、人情噺(ばなし)の世界から現実の世界に引き戻された。自分はどんな父親だったのかと。
会場の席番は最後方から2列目のほぼ真ん中。思ったほど高座から遠くなく、演者の表情や動作も十分に楽しめた。