「日蓮仏教」と女性 武蔵野大で公開講座

  • 徳川家康の側室、お万の方は大奥の法華信仰の象徴とされる。
    生地の千葉県勝浦市に像が立つ

 武蔵野大学仏教文化研究所が今年度の連続公開講座の統一テーマを「仏教における女性」として5回目の講座が11月5日、同大学武蔵野キャンパス(西東京市)であった。

 

 「近代日蓮仏教と女性」と題し、ロシア出身で大阪大学特任講師のブレニア・ユリア氏が講演した。

 

 ユリア氏は、日蓮には女性の信奉者が多かったとし、男女に差をつけない法華経の教えが女性の心をつかんだと考える。日蓮が女性に宛てた手紙には妻の力をたたえるなどやさしい気持ちが見られ、文章も魅力的だという。

 

 近世では大奥の女性たちに法華信仰が強く、代表格に徳川家康の側室のお万の方(養珠院)を挙げた。

 

 近代になると、明治期は一般の女性信徒が雑誌「妙宗」への投稿を通して励まし合い、皇族出身の尼僧日栄の精力的な活動や昭憲皇太后も熱心な信者だったなど皇室との関係を解説。

 

 大正から昭和初期にかけては、故土光敏夫経団連会長の母土光登美、土光とともに日蓮宗の在家団体に入会していた小泉菊枝、佐賀藩主の娘松平俊子と3人の女性に注目。

 

 この中で最も興味深いという松平俊子について、軍人の夫が日露戦争を機に日蓮宗に改宗し、俊子は長男を養子に出されたり死産したりする喪失体験から信仰を深くしたと述べ、日蓮法華経に関する著作が新聞社の人気投票で上位入りしたこと、関東大震災後に社会事業と取り組んだことなど活躍ぶりを紹介した。