三鷹の落語会はこの人が今年のトリ。柳家さん喬独演会が12月2日にあり、昼の部に行った。
プログラムの紙を開いてびっくり。小きち、小もん、小平太、さん助と4人もの名前が、さん喬の前に並んでいた。
前の2人は前座と二ツ目、あとの2人は真打ちとあった。みな柳家を冠しているが、後半に出演した小平太だけは、さん喬の一門ではなかった。いずれにしても様々な個性を楽しませてもらった。
さん喬は前半で「井戸の茶碗(わん)」、後半で「ちきり伊勢屋」を演じた。
「井戸の茶碗」は、正直者のくず屋が長屋住まいの貧乏浪人から仏像を買ってくれと頼まれたことから始まる人情噺(ばなし)。おとぎ話の「わらしべ長者」を思わせ、ハッピーエンドが待っている。聴いたことのある噺なので話芸の巧みさをしっかり味わえるし、人情噺なのに笑って楽しめる。
「ちきり伊勢屋」は、上演まで演目が知らされていないうえ、初めて聴くので、噺を追いかけるのと話芸の味わいの両方に集中力を傾けなくてはならない。「長い噺で前編だけで4時間かかるところを20分に詰めましょう」と言ったのに、終わってみたら1時間をちょい超えていた。
本編に入る前に「ちきり」が物事を結びつける意味だと説明され、新知識を得た。占いに出た主人公・質屋ちきり伊勢屋の若だんなの死亡日時が私の誕生日だったことは、聴き逃しを許さないという役割を果たした。
人の一生に、どんなに紆余(うよ)曲折があり荒唐無稽であったとしても、円熟の芸で行き着くハッピーエンドは後味がよく、心が軽くなった。