柳家さん喬独演会が12月17日に三鷹であり、「円熟」という言葉がぴったりの話芸を堪能した。
さん喬の演目は前半が「短命」と「寝床」、後半は「柳田格之進」。
「短命」は、質屋のムコさんが相次いで早死にするのはなぜか、というつやっぽい話。もったいぶった言い回しの連続に、「うふっ」という種類の笑いが何度もこみ上げてくる。
マクラでつなぎ、2席目の「寝床」へ。義太夫の会を催す大家の声もすごいが、聴きに行くまいと逃げ回る人物の声音の使い分けがうまい。オチが小僧の寝場所ではない「さん喬バージョン」は初めて知った。
謹厳実直な武士(浪人)と両替商との囲碁勝負を軸に盗難事件を絡めた「柳田格之進」。笑いがないままに話が進むが、すこしもゆるみがなく、人情噺(ばなし)にどっぷりと浸れる。ハッピーエンドのさん喬バージョンで、連れがいたら「いい噺だったねぇ」と語りかけずにいられなかっただろう。