<農業講座日記> 長野・安曇野でワサビ田を見学(11月12日)

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延長1キロに及ぶ大王畑。台風被害で上流への道は通行止めだった

 西東京市谷戸公民館主催の「農業を知る講座」の参加者ら25人が11月12日、世界最大級のワサビ田とされる長野県安曇野市の大王わさび農場を見学した。

 

 市のバスで約3時間半かけて農場に到着。すぐに場内のレストランに案内され、「本わさび丼」を食べた。ワサビの茎を細かく切って炊き込んだご飯に青ネギ、ネギトロ、かつお節の3種の薬味をのせる。しょうゆをかけて本ワサビをのせ、はしでよくかき混ぜて食べるという手順。

 

 ご飯はおかわりができる。豚の角煮、ニジマスのから揚げなど4品が付いて1650円。おひつのおかわりを求めるグループもあり、おおむね好評のよう。

 

 食事の後、農場観光課のスタッフが北畑、水車小屋、開拓者の像、大王畑の順で案内してくれた。

 

 北畑は大雑把に縦横100メートル、約1ヘクタールの広さ。人口の川に5度の角度で湧き水を流し、苗を植えてから1年のワサビが育っているという。水温は常時約13度。苗を植えて1年半から最長2年で収穫する。

 

 北畑を見渡す陸上にワサビのオブジェがあり、記念撮影のスポットになっている。

 

 水車小屋は黒澤明監督の映画作品などに使われた。そばを流れる蓼川(たでがわ)は湧水で透明度が高い。細い中島を挟んで並行する万水川(よろずいがわ)は一般の河川。二つの川は水車小屋の少し先で合流するが、しばらくは水の色が違ったままだという。

 

 万水川と合流した湧水は犀川千曲川信濃川となり、270キロの旅の末、日本海に注ぐ。

 

 大王畑は名水百選の水飲み場付近原から眺めた。全長約1キロに及ぶ。

 

 農場のワサビは、北アルプスから5~6年かけて湧き出る伏流水の栄養分だけで育つ。農場のワサビ田に湧き出す水量は1日に12万トンで、松本市民の1日使用量に相当するという。

 

 農場全体のワサビ田約15ヘクタールの年間収穫量は平均130トンで、全国の本ワサビ生産量の10%を占める。しかし、市場へは出荷しておらず、ほぼ全量を場内のレストランと売店で“自家消費”しているという話にはちょっと驚いた。

 

 観光に軸足を置いているからか、台風19号による被害は「いくらか倒木があった」程度に伝えられていた。現地に着くと、ワサビ田を渡る橋など奥に向かうポイントが何カ所も通行止めになっていた。

 

 このため、見学に続くわさび漬け体験の後の自由時間を持て余し、午後3時に予定していた帰りの出発時刻を40分早める結果となった。

 

 雪をいただく北アルプスの峰々を雲間に望むことができ、きりっとした空気が心地よい絶好の行楽日和に恵まれただけに、散策路の大幅な通行制限が惜しまれた。

ひっそりと咲くコブクザクラ 世田谷区 砧公園

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晩秋の日差しに映える砧公園のコブクザクラの花

 すがすがしい青空が広がった11月10日の日曜日。砧(きぬた)公園(東京都世田谷区)は、弁当を囲む家族やバドミントンなどのスポーツを楽しむ親子らでにぎわっていた。そんな芝生広場を見守るように、小さな白い八重の花を付けたコブクザクラが2本立つ。

 

 コブクザクラはジュウガツザクラやフユザクラと同じように、秋から冬にかけてと春に咲く。ここでは10月上旬に咲き始め、この日は開花を待つつぼみや花芽も多く付いていて、長丁場に備えているようだ。

 

 花はめしべの数が多く、一輪につき2~3個のサクランボがなることから、漢字で「子福桜」と書く。

 

 砧公園は広大な芝生とともに桜の名所としても知られる。桜はソメイヨシノヤマザクラを中心に1千本近くあり、春には1日最大10万人の花見客を記録したことがあるという。

 

 それに引きかえ、そそとしたたたずまいのコブクザクラは遠目に目立たず、席取りを競わせることもない。それでも時折、スマホのカメラを向ける女性の姿が見られた。

東京港臨海部 上から下から拝見

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地上100メートルから東京港を望む。眼下に青海コンテナふ頭


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巨大地震に見舞われた夜の街。安全に歩く知恵を学ぶ

 

 市民でつくる北多摩自然環境連絡会の今年最後の見学活動が11月6日にあり、東京港を地上100メートルのビルから眺めたり、水上バス臨海副都心の風景を見たりした。

 

 20人が参加し、新交通ゆりかもめテレコムセンター駅そばの青海(あおみ)フロンティアビル20階の「ミナトリエ」(東京臨海部広報展示室)へ。

 

 日比谷入江の埋め立てに始まり、掘割を巡らし、埋め立てが沖合へと延びる江戸・東京400年の歩みが大型のタッチパネルモニターや写真パネルなどでわかる。

 

 タブレット端末を使えば、普段見られない場所や臨海副都心の未来をAR(拡張現実)映像で体験できる。眼下にはコンテナクレーン12基を有する現実の青海コンテナふ頭があった。

 

 展示室のスタッフが、上方から船で運ばれた新酒到着でにぎわう河岸のジオラマや、埋め立てが進むにつれて消える台場などの歴史をはじめ、来夏の東京五輪パラリンピックに備える競技会場や新客船ふ頭の建設などについて約1時間説明してくれた。

 

 ビルとビルをつなぐ「滝の広場」で少し早めの昼食をとり、テレコムセンター駅から再びゆりかもめに乗って有明駅で下車。駅前に国内唯一の国営防災公園・東京臨海広域防災公園が広がる。

 

 その一角に建つ防災体験学習施設「そなエリア東京」に入った。再現された被災地や避難場所・避難所、起震実験などを目の前にして、担当のスタッフから「地震発生後、72時間を生き抜く知恵」を学ぶ。屋上庭園からは6機分のヘリポートが望めた。

 

 防災公園からは歩いて東京ビッグサイト近くの有明船着場へ。ここから東京港巡りの水上バスが出発するという。

 

 東京都は都民による東京港の見学などに使う視察船「新東京丸」が老朽化したため、9月から新視察船を就航させる予定だった。しかし、新造船に不具合が見つかり、修理に時間がかかることから当面、年内は水上バスで代替させることにした。

 

 運航は10月から午後3時~4時の1回で、定員は11、12月が100人。水深が浅い場所でも運航できる水上バスの特色を生かし、お台場海浜公園や運河など臨海副都心を身近に感じられるようコースを工夫したという。

 

 この日は団体客らで満員。都港湾局を退職したというガイドが、乗客の目が追い付かないのではと思うほど視界に入るものを次々と説明した。

 

 船はレインボーブリッジをくぐり右手に豊洲市場芝浦ふ頭を見、再びレインボーブリッジをくぐってお台場海浜公園に近づく。東京港トンネルを超えると右に大井コンテナふ頭、左には午前中に高所から見た青海コンテナふ頭。どちらにも赤白に塗り分けられた巨大クレーンが列をなし、国際物流の拠点を印象付ける。

 

 今回見学した施設の入場も水上バスの乗船も無料。水上バスは団体利用の予約希望が多く、企画担当者には2時間がかりでようやく電話がつながるというご苦労をかけた。

<農業講座日記> 持ちきれるかな⁉ 収穫本番(11月5日)

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白菜はこの日が初収穫


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収穫した野菜を山分け

 

 講座19回目の11月5日はニンジンの追肥、カブの間引きのほか、大根など野菜5種類を収穫した。

 

 朝から雲一つない青空が広がった。畑の南側に建ち並ぶ住宅の影は長くなり、日当たりの良しあしが作物の生育に影響するようになった。

 

 今日は収穫作業が中心だが、ニンジンの追肥とカブの間引きをしてもらうと先生から話があった。ニンジンは、肥料の3要素を含む粒状の複合肥料を各班500グラム、うね間の両側に上からばらまく。カブは大きい幼苗を1本だけマルチシートの穴に残し、ほかのものは抜き取る。

 

 収穫するブロッコリーは茎を長めにして切り取る。茎の葉は畑に切り落としたままでよい。根は引き抜かなくてよいが、切り株には十字に刃を入れることで成長を止める。

 

 キャベツは、わせの品種を班の人数分、大根は日当たりのよい所の太いものを自分で選んで1本、白菜も大きいものを1人1個収穫できることになり、先生は「くれぐれももめることのないように」とジョークを飛ばした。

 

 私の班は班長がニンジンの追肥を引き受けてくれた。先週はブロッコリーが小さく、一つも収穫できなかったため、ほぼ全員がキャベツ、カリフラワー、ブロッコリーがまとまって植えられた畑に入った。

 

 上からのぞき込んで球の大小を見比べ、包丁を当てようとすると、「片方に押し倒して」と先輩から声が飛ぶ。刃は茎に水平に当てる、刃を土につけないよう力を加減するなど、言われてわかることが相変わらず多い。葉は数本を束ねるように持ち、スパッと切れば合理的だ。

 

 カリフラワーは葉をかけて持ち包丁を入れれば、泥が付いて商品価値を落とすことはない。

 

 畑にブルーシートを敷き、一山ずつ人数分を並べ、それぞれに好きな山を選んだ。私の取り分はカリフラワーとキャベツ、白菜各1個、ブロッコリー3個、大根1本と間引いたカブ1束。

 

 用意してきたレジ袋が破れたり、足りなくなったりと想定外の大収穫。全部で20キロはありそうなレジ袋を両手に下げ、15分ほど歩いて帰宅したが、ほかの人のようにこの日ばかりは自転車で来るのが正解だったと悔やんだ。

 

 約1時間で全ての班で作業が終わり、先生が話したところによると、講座用の畑と地続きの先生の畑ではブロッコリーとカリフラワーに多雨による病害が発生し、約3割の収量減が確実という。カリフラワーは今年初めて作った品種を来年は別のものに切り替えるという。

 

 ただ、講座の作物は一部の白菜を除いて順調な出来で、「みなさんは今日で元(年間の種苗・肥料代1500円)を取ったのではないでしょうか」と話し、参加者たちを笑わせた。

府中・白糸台掩体壕 戦争遺産に見学者続々 1日だけ公開

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戦闘機を隠した掩体壕の外観


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戦闘機がぎりぎり収まった天井。触ることもできる

 

 東京・府中市にある戦争遺跡、旧陸軍調布飛行場白糸台掩体壕(えんたいごう)の内部が11月3日、特別公開され、市内外から大勢の見学者が訪れた。

 

 掩体壕は太平洋戦争の末期、戦闘機を空襲から守るために造られた格納施設。調布飛行場の周辺には、コンクリート製の屋根のあるもの約30基と、周りを土提で囲み草や木で作った覆いをかけるもの約100基があった。

 

 現在は、コンクリート屋根のものが都立武蔵野の森公園三鷹市)に2基、府中市に2基残るが、内部を一般公開しているのは白糸台掩体壕だけだ。

 

 市史跡に指定されており、雨漏り防止工事などの保存整備を行い、東京文化財ウィークの企画事業として文化の日に限定して公開している。

 

 この日は文化財担当の市職員が内部を案内。現在の地面は1.7メートルかさ上げされていることや、資材や労力を切り詰めて機体が入るギリギリの幅と高さで造られ、格納するときは約20人が綱で引き入れ、壕の後部の穴から出たことなどを紹介した。

 

 掩体壕の多くは旧陸軍が個人の土地に強制的に作らせたため、終戦後に取り壊されたが、ここは農家が納屋として使い続け保存状態が良かったという。

 

 見学者たちは、天井からぶら下がるセメント袋の切れ端や固まりかけたセメントをそのまま使ったことがわかる壁面などを目にして、「突貫工事だったのだろうな」などと戦時に思いを巡らせていた。

仏が無数に増殖する壮大な奇跡 華厳経

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 武蔵野大学仏教文化研究所主催の連続公開講座「大乗経典の魅力を語る」の5回目が11月2日、同大武蔵野キャンパス(西東京市)で開かれ、国際仏教学大学院大学国際仏教学研究所副所長の堀信一郎氏=写真=が「『華厳経』はどのような作品か」と題して話した。

 

 堀氏は、華厳経の正しい訳は「仏華厳経」であり、仏華厳とはハスの花に座った1人の仏の背後に左右に連なる仏の大集団を作り出し、外道を屈服させたという壮大な光景のことだと説明。その光景を表す挿絵や洞窟に残された壁画・彫刻を画像で示した。

 

 仏華厳経の内容については、仏陀(ぶっだ)が悟りを開いた直後に内容をそのまま表現したため難解な部分があるとしながら、入法界品(にゅうはっかいぼん)にはわかりやすい部分もあり、現代語訳の本を読むよう勧めた。

 

 入法界品は資産家の御曹司(善財童子)が悟りを求めてインド各地に54人を訪ね旅する物語で、主要な菩薩のほか、天才的な数学少年など様々な人物が登場し、夜を神格化した女神の過去生も面白いという。

<農業講座日記>カリフラワーとブロッコリー 雨中の収穫

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雨がっぱを着てカリフラワーの収穫作業


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腸内フローラの大切さを話す小松光一さん

 

 講座18回目の10月29日は谷戸公民館で講義を聴いた後、畑に移ってブロッコリーとカリフラワーを収穫した。

 

 年間計画通り、この日は午前10時から久々の講義。大地を守る会顧問の小松光一さんが「腸内フローラと農業」と題して話した。

 

 コメは、胚芽を落とさない玄米の繊維質が腸内フローラ(大腸で栄養を吸収しやすくする微生物)を育てる。水稲は根を取り巻く根圏菌が土中の栄養を吸収するので、土づくりは人の日常の養生と同じことだと指摘。

 

 そのうえで、農業を現場で指導する保谷隆司さんの堆肥作りが落ち葉を主原料にしてゆっくり効く「ぼかし肥」であることを評価し、「人間の『腹八分目』」と例えた。

 

 講義の後は、前週に保谷さんが告げていた通り、畑での収穫作業となった。とくにブロッコリーは1週間置いたら花が咲いてしまうということで、雨中での決行。

 

 正午過ぎ、保谷さんが「カリフラワーにべと病が出ているので、小さくても全部取るように」「ブロッコリーは拳より大きいものを」と指示。雨具を完全装備した人たちが畑に入った。

 

 べと病はかびが原因で起きる病気。「雨の日が多くて発生した」と保谷さん。感染したカリフラワーは、部分的に薄茶色になっている。夜のニュースによると、東京は10月、雨の日が25日もあり、51年ぶりの記録という。

 

 二つの作物は9月3日に苗を定植した。一見すると生育は均一のようだが、べと病のカリフラワーが多かったり、ブロッコリーが小さくて収穫できなかったりと、班によって出来はまちまち。それでも自分たちが手をかけた作物を収穫する喜びは格別だ。

 

 私の班はカリフラワーだけの収穫で、分配は1人当たり3~4個。病害はほとんどなく、ずしりとした重さが採れたてのみずみずしさを主張していた。