病気吹き飛ばす熱演 権太楼独演会

 あれっ、少し太ったような…。高座に上がった柳家権太楼さんは病み上がりだった。

 

 3月12日、三鷹での独演会。昨年の今頃は同じ高座で新型コロナに感染したことをネタにしていたが、今年は肺炎(公式ツイッターによると間質性肺炎で昨年11月に緊急入院)の治療薬の副作用で「顔がむくみ、太ってきた」。

 

 権太楼さんは私より1歳年上。私は今のところコロナから逃れているが、他の病気に忍び込まれやすくなり、最近後期高齢者に仲間入りした。「やぁ、ご同輩」と権太楼さんに話しかけたい気分だ。

 

 この日の演目は前半が「一人酒盛(さかもり)」。前日、横浜で演じた2席のうち、「気合が入り、面白かった」1席とマクラで話した。

 

  いただき物の超高級な酒を試し飲みした男が、相伴させた飲み友達をそっちのけで全部飲み干した揚げ句、「あいつは酒癖が悪い」とサゲる。次々と繰り出されるべらんめえ口調と、ダイナミックな酔態の変化が爆笑を誘った。

 

 中入り後の2席目は「大工調べ」。滞納した家賃のかたに大工道具を大家に持っていかれた、ちょっと間抜けな男。それを取り返そうと大家と直談判する親方。わずかな不足金を理由に頑として譲らない大家。緩急自在に3人のやりとりを語るくだりは圧巻さ。「3年以上やっていないネタ」とはとても信じられない。

 

 終演時には「どうでぇ、ご同輩」と師匠に元気を見せつけられた思いだった。

もうすぐ満開 河津桜 いこいの森公園

西東京いこいの森公園への通路で満開間近の河津桜=2月28日正午すぎ

 春本番の陽気となった2月28日、西東京いこいの森公園で早咲きの河津桜が3~5分咲きとなり、通行する市民の足を止めている。

 

 谷戸新道から公園出入り口までの通路約100メートルの谷戸小学校側に、河津桜ソメイヨシノが交互に並ぶ。

 

 この日、都心の気温は19度を超えて4月中旬の暖かさ。空の青さと競うように河津桜は濃いピンクの花びらとつぼみをまとって枝を広げる。

 

 3月初めは日中の気温が高めで推移しそうとの予報が出ており、もうすぐ見ごろを迎えそうだ。

施政方針 トップ項目に「恒久平和」

設置から20年以上たち、夜間も映えるように改良される「平和のリング」

 池沢隆史市長は2月24日に開会した第1回定例会で述べた施政方針で「恒久平和への願いについて」をトップ項目に据えた。昨年の施政方針でトップだった「新型コロナウイルス」は2番目となった。

 

 ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって1年。施政方針の総論ともいえる「はじめに」の中で侵攻に触れ、駐日ロシア連邦大使館に侵攻の即時停止と平和的解決を訴える抗議文を送ったことや、ウクライナから避難して市内に住む人への支援を盛り込んだ。

 

 これを受けて「恒久平和への願い」は西東京市に絞り込んで記述。1945年4月12日の田無駅付近への大空襲をきっかけに条例で「西東京市平和の日」を定めたり、非核・平和都市を宣言したりした歴史をふり返り、新たな取り組みを挙げた。

 

 その一つは「子ども・若者平和ワークショップ」(仮称)の開催。平和のために自分たちに何ができるかを考える機会として5月か6月の実施を予定している。

 

 爆撃地点近くの田無駅北口広場に1996年に設けられた「平和のリング」は、噴水と合わせて補修する。リングはライトアップするなど夜間でもリングが照明で浮かび上がる仕掛けにするという。

 

 旧田無市の初代市長だった指田吾一氏が広島で被爆しながらも軍医として被爆者の治療に当たったときの手記「原爆の記」を原作とするアニメ(約10分)の制作が進んでおり、アスタビルで行われる「平和の日」記念行事として上映が予定されている。

<西東京市議会> 改選後初の定例会が開会

 任期満了に伴う市議選後、初の第1回定例会が2月24日、開会し、会期を3月28日までの33日間と決めた。

 

 池沢隆史市長は施政方針で新年度予算の概要などを述べた後、本年度の補正予算案3件、新年度の一般会計など予算案6件、条例の一部改正案10件の議案計19件の提案理由を説明した。

 

 新年度の一般会計予算案は前年度比0.5%増の774億9千万円となっている。

 

 予算関係は予算特別委員会に、条例関係と陳情5件は所管の常任委員会に付託されたた。

 

 代表質問は27日から始まる。

春風亭昇太 「愛宕山」に汗流す

 2月23日、三鷹春風亭昇太独演会を楽しんだ。

 

 前半は新作落語の「ストレスの海」と古典の「胴切り」。「ストレスの海」は、夫の健康を思いやり、ストレスを解消してやろうとあれこれ奮闘する妻が夫を海に連れ出し、ボムボートで沖へ出る。そこで夫の運命が…。

 

 荒唐無稽な話ではないので大笑いはない。むしろ現代を生きる自分と重ね合わせてストレスが気づかないところにあったり、死に直結したりする怖さを教えてくれる。

 

 新作落語について昇太さんは「作った人が演じれば面白い」と言った。作者に遠慮なく改良を重ねられるということなのだろう。

 

 この一席が終わると、昇太さんは高座に立って着替えを始めた。羽織を脱ぎ、帯を解き、着物を脱ぐ。男性の長じゅばん姿を初めて見た。なかなか色っぽい。

 

 楽屋に下がって着替えをすると、その間、誰かを高座に出さなければならず、「無駄に諸経費がかかるでしょ」。着替えも芸のうちなのかな。

 

 二席目の「胴切り」は、辻斬りに切られた上半身と下半身の二つに分かれた体がそれぞれ風呂屋の番台とコンニャク踏みと格好の職を得る。しかしお互いに不便もあって…とこちらはギャグ漫画顔負けの展開。

 

 後半は、チラシで演目を予告していた「愛宕山」。旅の途中、素焼きの皿を投げて輪の中を通す「かわらけ」という遊びに、旦那に付いていった芸人が挑戦。旦那が投げた小判25両を谷底に拾いに行く芸人が、行きは傘で飛び下り、帰りは竹のしなりを利用し宙を飛んで戻る。

 

 この演目は話芸以上に体を使ったパフォーマンスが見どころ。皿や小判を投げるさま、小判を捜すさま、着物を割いてひも状のものを何本もつなぎ合わせるさま――と、膝立ちで体を大きく動かすシーンの連続に、客席から大きな拍手が送られた。

 

 本編を演じ終えた昇太さんは「やる気のあるところを見せなきゃ。それにしてもこんなに汗をかくとは」と手拭いを顔に当てた。

 

 昇太さんは噺(はなし)家仲間で新作落語のグループを作っており、古典落語の続きを創作する話が持ち上がっているという。「それができて、やる気があったらいつか通しでやりましょう」と約束した。

史跡・下野谷遺跡 竪穴住居復元見学会に70人

発掘調査が早かった方の竪穴住居。屋根は土をかぶせる前に防水シートを張った状態

屋根に芝生を張り、復元工事が進んだ竪穴住居。1家族の住居とみられるという

 西東京市東伏見の史跡下野谷(したのや)遺跡で行われている竪穴住居の復元工事見学会が2月19日にあり、約70人が参加した。

 

 下野谷遺跡は、石神井川の南側の高台に縄文時代中期(5千年~4千年前)の大集落が二つあり、特に西集落は都市部に全域が保存されている貴重な遺跡として2015年に国史跡となった。

 

 市は21、22年度で遺跡区域の本格的な整備を進め、昨年度は木造のトイレ棟、遺跡周辺を含む航空写真を焼き込んだ陶板を設置。通路・広場をタイル舗装し、縄文時代の集落や暮らし、文化などを解説する看板も設けた。

 

 今年度は竪穴住居2基の復元と大量に土器が出土した地点の野外展示が整備事業の中心で、事業費は約1億円。施工業者は復元工事の進捗(しんちょく)率はこの日で85%と話した。

 

 竪穴住居は2基とも内部に入れなかったが、発掘調査の結果に忠実に同じ位置に同じ規模で復元しているという。

 

 外見の違いは、1基は屋根が防水シートで覆われ、もう1基はその上に土をかけ、さらに芝生を張りかけてあったことだ。最近の研究で竪穴住居の屋根はクリの樹皮の上に「土ぶき」とわかってきたという。

 

 柱やはりの部材は昔と同じようにクリの木を使った。クリは食料としてだけでなく、堅くて丈夫な半面、時期によって石おので切りやすいことが説明された。クリの木の特性を知る縄文人は5月から7、8月にかけて住居を作ったのではないか、とも。

 

 市によると、住居の中に入れる時期は今年秋になる見通しだ。今後はキハダなどの樹木のほか畑で大豆や小豆、エゴマなども植えて当時の食料を再現するなどして「したのやムラ」の景観だけでなく、知識や考え方まで想像できるようにしたいとしている。

法隆寺の未来考える 世界遺産30周年で記念シンポ

日本初の世界文化遺産に登録された法隆寺の金堂

法隆寺の未来の役割などを探ったシンポジウム会場

 法隆寺世界遺産登録30周年を記念するシンポジウム「世界の至宝・法隆寺~1400年の歴史を未来へ~」(法隆寺朝日新聞社など主催)が2月18日、東京・有楽町朝日ホールで開かれた。

 

 定員の2倍強の応募があり、抽選に当たった約700人が参加した。

 

 古谷正覚・法隆寺管長が、世界最古の木造建築の金堂など建物の沿革を紹介し、「焼損した金堂壁画をどう残し、公開できるかを考えたい」とあいさつ。

 

 文化財の保存科学や防災などの専門家3氏が世界遺産法隆寺をめぐり、「内容と価値」「文化財防災の未来」「登録の意義と展望」のテーマで講演した。

 

 古谷管長と専門家の4氏による座談会では「壁画だけでなく、焼けなかった柱の内側を見たり、においを感じられたりと五感に訴える見せ方や動線の組み立てが大事」「傷ついたものにも価値がある。負の遺産を被災の記憶として伝えていくのもこれからの使命」などの意見が出た。

 

 中村史郎朝日新聞社長は閉会あいさつの中で、法隆寺金堂壁画保存活用委員会が3月中に提言をまとめる予定だと述べた。

 

 焼けた金堂の壁画や内陣の柱などの部材は現在収蔵庫に収められ、保存活用のための調査や研究に資金を寄付した人に限り公開されている。調査研究の成果が一般公開の実現にどれだけ近づけたのか、提言の内容が注目される。