埋蔵文化財の保存と活用を考える講演会が7月17日、西東京市役所保谷庁舎で開かれた=写真。今年3月、同市東伏見の下野谷遺跡が国の史跡に指定されたのを機に、東京都文化財保存整備区市町村協議会が主催し、行政の担当者や市民ら約60人が参加した。
講演したのは文化庁記念物課の埋蔵文化財部門文化財調査官、水ノ江和同(かずとも)氏。史跡は地域の歴史や文化を語る代表的な文化財であるとともに、郷土愛やアイデンティティーをはぐくんだり、まちづくりの拠点や観光資源、教育資源などになったりしていると、多くの意義を話した。
そのうえで、各地の遺跡や史跡に見られる整備と活用の事例を写真で紹介。
整備については、複数のボランティア団体が遺跡の清掃、イベント企画、博物館の運営などに住み分けしている(岩手県一戸町、御所野遺跡)、規模が大きすぎるため縮尺模型を設置して全体がわかるようにする(栃木県小山市、寺野東遺跡ほか)、周囲に木を植えることで現代の光景も音もさえぎり、縄文時代の演出効果を高める(鹿児島県霧島市、上野原遺跡)など9カ所を取り上げた。
活用の仕方では、男女の埴輪(はにわ)や土偶を図案化してトイレの場所を表示する(長野県茅野市役所ほか)、貝塚の名前をそっくり支店名にした(東大阪市のJA)、昔捨てられた土を子どもたちに模擬発掘させる(宮城県東松島市、里浜貝塚)など10例を示した。
水ノ江氏は「(国史跡の)指定はゴールではなく、終わりなき整備・活用の始まり」と強調。下野谷遺跡の今後については、セールスポイントを何にするかと併せて、史跡と現実の環境変化がどう共存するかが課題だと述べ、「いろいろな事例を見ながら行政と地域のみなさんで考えて」と結んだ。(下の写真は水ノ江氏)