大菩薩峠 登山道は春の雪景色 秀麗な富士山に感動

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西武新宿線田無駅に近い飲食店の女性店主と客の総勢5人が、日曜日の4月23日、山梨県甲州市大菩薩峠(標高1897メートル)=写真=に向かった。

大菩薩峠とそれに続く大菩薩嶺(標高2057メートル)は中里介山の長編小説や深田久弥の「日本百名山」で知られる。

登山初心者でも登りやすく、富士山などの展望を楽しめ、日帰りができるなど、条件がそろっていた。ちなみに今回のグループのうち私を含む3人が初級レベルで、大菩薩峠に登るのは全員初めてだ。

日帰りするため、塩山駅前でレンタカーを借りることにしていた。午前7時すぎ、武蔵境駅からJR中央線に乗り、スーパー特急あずさに乗り継いだりして9時前に塩山着。車は約40分で上日川(かみにっかわ)峠駐車場に着いた。ここはすでに標高1600メートル。ロッヂ長兵衛の周辺はすでに空きがなく、右手の奥の駐車場へ行く。

駐車場で体を伸ばし、ロッヂ長兵衛~福ちゃん荘~富士見山荘~大菩薩峠~雷岩~唐松尾根~福ちゃん荘と反時計回りのルートをとる。

東京は前日、長時間雨が降り、山行きを危ぶむ向きもあったが、この日の山梨は青空が広がっていた。ロッジから福ちゃん荘までは約20分。道は舗装されている。カラマツやダケカンバ、ミズナラなどの樹木はまだ芽を吹いておらず、林は冬のたたずまい。道端の所々や谷に氷雪の塊が残っていた。

福ちゃん荘から先は舗装がなくなる。閉鎖中らしい富士見山荘を過ぎると右にこの日初めて富士山が見えた。勝緑荘を過ぎるころには、道端のササや頭上のコメツガの枝に雪が残り、水滴となって落ちてくる。登山道の日陰には圧雪状態の箇所もあった。

福ちゃん荘から1時間ほどで介山荘が見え、大菩薩峠に到達した。視界が一気に開け、上日川ダム(大菩薩湖)の向こうに北岳など南アルプスが白い稜線を延ばしている。

おにぎり弁当を食べ、湯を沸かしてカップ麺をすする。「おいしい」「うん、うまい」。山で食べると、いつも格別な味だ。

正午ちょうど、腰を上げて大菩薩嶺への縦走路を進む。一番近くに頂のように見えるのは「親不知(おやしらず)の頭」。

歩き始めて何分もたたないうちに足が止まり、振り返った風景に感動の声が上がる。休んでいるときは見えなかった富士山が、突然、姿を現したのだ。

北から見る富士山は、ゆったりと裾野にのびる線がなんとも美しい。カメラを富士に向けたり富士をバックに写真を撮り合ったりしたが、親不知の頭に着くまで、何度も振り返ってカメラを向けたくなる気持ちを抑えきれなかった。

親不知の頭から「賽(さい)の河原」を抜け、雷岩(標高2040メートル)を目指す。標高2千メートル地点を過ぎたころ、東の谷から湧き上がってきたガスが背後を覆いだし、富士山も雲に隠れ始めた。

そんな時、キツネが登山道の脇の木の根元に鼻を突っ込んでいる光景に出合った。人間に慣れているのか、数人の登山客の視線を浴びても動じなかった。野生動物とは、このあと雷岩から下る途中、樹林の向こうの草地に3頭のシカを目撃できた。

大菩薩嶺には向かわず、午後1時すぎ、雷岩から唐松尾根を下りた。道は滑りやすく、岩場や傾斜が緩やかと言えない所もあって、初心者にとってはかなりの難行だったが、ロッヂ長兵衛に2時40分ごろ到着とほぼ計画通りのペース。

けがなどのトラブルもなく、全員無事に田無に帰り、店で祝杯を挙げたのだった。(下の写真は介山荘手前、縦走路から見えた富士山)
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