今回のコースは登山口から荒山高原まで約50分、高原から鍋割山まで約40分を折り返す計5キロで、3時間30分から4時間を見込んでおり、添乗員は「ハイキング気分で登れる山」と話した。
「ハイキング気分」には仲間の初心者から異論が出たが、下山までに要した時間は約3時間10分と主催者側の見込みよりも大分早かった。
コースの途中にはトイレがないので、駐車場のトイレで用を済ませ、準備運動をして11時15分、出発。入り口から丸太の階段が延々と続くが歩幅が合わないので、横の細い道を進む。道端には、白い小さな粒々がはじけたような花を咲かせるコアジサイが目立つ。
杉、ヒノキの造林地はやがて緑が鮮やかな広葉樹林に。難なく歩けた土の小道が岩のかけらに変わると傾斜も急になる。「ここが風穴です」と先頭の添乗員の声。一人ずつ岩の割れ目をのぞき込み、噴き出す冷気を感じようと顔を突き出す=写真下左。穴の入り口に取り付けられた温度計は17度を指していたが、「冷気」への期待が大きいせいか、首をかしげる人が多かった。
不慣れな登山者にとってはコース最大の難所と思われるガレ場を越えると、最初の目的地の荒山高原(標高1255メートル)だ。休憩を1回入れて約40分の頑張り。
荒山高原は荒山と鍋割山の間の鞍部(あんぶ)に当たる。そう広くはなく、眺望も利かないが、ツツジを中心とした低木のある草原が開けていて、ほっとする。草や岩に腰を下ろし、高坂SAで積み込んで各人に配られた弁当を広げ、30分間の休憩。
ツツジはこの旅行商品の目玉で、ツツジの名山・赤城山でも荒山高原から鍋割山は最も多いとされる。ピンクのトウゴクミツバツツジや朱紅色のヤマツツジが例年6月に見頃を迎えます、との宣伝文句だったが、添乗員はバス車中で早々と「今年は1カ月ほど早く見頃が終わってしまいました」と謝った。
荒山高原からは、咲いていればさぞ美しかろうと思われる両脇のツツジの木の間を進む。10分も歩くと左の展望が開け、雲海が広がっていた。尾根道に出て、振り返ると荒山や電波塔の立つ地蔵岳が見えた。道端に、添乗員が「1週間前に登った時は1本だけ残っていた」というツツジが、まだ名残の花を付けていた。
その先の草原になった小さな頂が「火起山(ひおこしやま)」=写真下右。もう少し先にも「竈山(かまどやま)」があり、午後1時、鍋割山の頂に到達した。
山頂はそこそこに広い裸地で、南面が大きく開けている。雲海のはるか遠くに富士山が小さなシルエットをのぞかせた。前橋や桐生などの市街地こそ雲の下だったが、手前の秩父山系や浅間山などの山並みも見分けることができた。