西東京市郷土文化会の12月例会は4日、しょうゆ生産で知られる千葉県野田市であった。17人が参加し、キッコーマンもの知りしょうゆ館と野田市郷土博物館、主屋などが国登録文化財になっている市民会館を訪ねた=写真は野田市郷土博物館の常設展示室。
現在も宮内庁にだけ納めるしょうゆの醸造所で、大豆や小麦などの材料はすべて国内産。もろみを自然の中で1年間、発酵・熟成させるという。熟成中の杉の木おけが並ぶ仕込み室を透明の樹脂板越しに見ることができる。なぜか警備員が「味の違いがすぐわかります。小さい瓶入りを館内の売店でだけ売っています」とセールストーク。工場見学後に多くの人が買い求め、効果てきめんだったようだ。
工場見学は、DVDでしょうゆのできるまでを見た後、材料からボトル詰めまでの工程がパネルやビデオを使って説明され。途中、熟成期間の異なるもろみのにおいを嗅ぎ比べたり、もろみを布に包んで機械でしぼる圧搾工場を見たりした。
見学コースから戻り、記念品の200ミリリットルのボトルを受け取る。カフェのしょうゆソフトがなかなかの人気。買い物が終わると、「むらさきの里 野田ガイドの会」の関根武光さんら二人のボランティアガイドに率いられて市民会館へ向かう。
私たちが借りた松の間、竹の間、梅の間は合わせて26畳あり、市外の団体の利用料金は1時間1千円。松の間(10畳)は主人の部屋で、3幅の掛け軸を飾れる床の間や違い棚を備えている。欄間はキリの一枚板。最上級の接待にも使われたという部屋で食べると、弁当の味も格別に感じられる。
食後、内部を見て回る。松の間から梅の間まで廊下のなげしは杉の一本丸太。洗面所の床は寄木造り。板の間の「上台所」に置かれた大きな調理台は、まな板として使った後にふたをかぶせることで飯台に変わる。1924(大正13)年の建築だが、栄華をしのばせながら、モダンで合理的な作りに感心させられる。建具は東日本大震災にも狂いが出なかったという。
市民会館のすぐそばに郷土博物館があり、2階で江戸時代中期から昭和30年代まで、しょうゆにまつわる資料を展示している。高瀬舟や醸造現場のミニチュア、明治時代の押し絵扁額(へんがく)「野田醤油(しょうゆ)醸造之図」、御用額、9升たるなどが並ぶ常設展をガイドさんの解説付きで回る。1階では特別展「鉄道と野田」が開かれていた(12月17日まで)。
野田市駅までの帰り道にもまち歩きができた。しょうゆの語呂合わせで1926(大正15)年建設の旧野田商誘銀行はキッコーマンの財産管理を担う会社になっている。玄関がロマネスク風のアーチの興風会館は国の登録文化財。2代目本店跡、もろみの倉庫という「稲荷蔵」、忍び返しを備えた茂木本家の門と本家を取り巻く見事なれんが塀など、茂木家とキッコーマンの歴史を至る所で目にすることができる。
ガイドさんの絶妙なポイント選びとペース配分で予定通り午後3時に野田市駅に到着。二人にお礼を述べて帰途に就いた。(下の写真は左から、キッコーマン「御用蔵」の仕込み室、市民会館の松の間で間取りを説明するボランティアガイド)