縄文と日本美術と岡本太郎 東博でトークイベント

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 特別展「縄文――1万年の美の鼓動」を開催中の東京・上野の東京国立博物館=写真=で7月22日、トークイベントがあり、美術史家の山下裕二氏と同館副館長の井上洋一氏が「縄文・日本美術・岡本太郎」をテーマに語り合った。

 定員380人の事前申込制だったが、当日キャンセルを待つ数十人の列ができ、縄文人気の高まりを見せた。

 井上氏は「ひげのおやじ二人が縄文土器を熱く語りたい」と切り出した。

山下氏は芸術家・岡本太郎191196)を「縄文の美の発見者」と語り、岡本が52年に美術誌で発表した「縄文土器論」がセンセーションを巻き起こしたことや、60年代からの岡本作品が縄文土器のアイデアやエネルギーを色濃く反映していること、別の美術誌が岡本の追悼特集を組むまで縄文土器の持つ美術性は世間から忘れられかけていたことなどについて、資料写真を使って話した。

 「縄文土器の評価を巡る美術史家と考古学者の溝は深く、教科書も昔は仏教美術から始まっていた」と山下氏。

 井上氏は「暮らしの美」から「新たにつむがれる美」まで六つの章で構成する展覧会の見どころを、土器や土偶の写真をたくさん使って紹介。

今回の特別展の最大のウリは、縄文の国宝6件すべてが史上初めて集結することだ。ただ、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」の土偶2体は31日からお出ましと遅れるが、「それまではゆっくりと見られます」と抜け目なくPR。第2章「美のうねり」では国宝級のつぼ型土器が露出展示されているという。

 山下氏は「縄文的なるものが伏流水となり、間欠泉のように噴き出した造形」として室町時代大和絵屏風(びょうぶ)や伊藤若冲葛飾北斎田中一村らの作品を解説したほか、国宝にしたい土器として遮光器土偶など3点を挙げた。

 井上氏は「縄文の美は日本人の精神の根幹をなす美。世界の先史に比べて群を抜く造形で、人間とは何かという根源的な問いかけをしている」と話した。

 同展は9月2日まで。月曜休館(8月13日は開館)。