
それでも園内ガイドのボランティアのご厚意で1時間、古建築を移築した内苑をじっくり見学することができた。
三渓園は実業家・原三渓が造った日本庭園で、国の名勝に指定されている。外苑とプライベートな庭である内苑から成り、内苑には紀州徳川家の初代藩主が建てた別荘を移築した「臨春閣(りんしゅんかく)」を中心に、京都や鎌倉などから集められた歴史的建造物が自然と調和して配置されている。
臨春閣は、老朽化した檜皮(ひわだ)と杮(こけら)の屋根をふき替えるなどの大規模修理が今年から30年ぶりに始まっており、桂離宮に似せた雁行(がんこう)形に連なる3棟のうち2棟に工事用の覆いがかかっていた。
開放された第三屋では欄間に本物の笙(しょう)がはめ込まれているのが見え、月見の宴では遠くの三重塔の横に出る月、池の水面に移る月、杯に映る月と「三つの月」を楽しめる設計になっていたと、三渓の遊び心が説明された。
内部を公開していない楼閣や茶室などの建物については写真で襖絵(ふすまえ)や古材の由緒などを解説したり、パンフレットにはない敷石やちょうず鉢などの石造物を説明してくれたりと、サービス精神いっぱい。
一方で中秋の名月をめでる「観月会」や紅葉の時期の再訪を呼びかけ、PRもぬかりなかった。
外苑の木陰で弁当を食べ、見ごろを迎え始めたハナショウブを楽しんだ。
馬の博物館は三渓園からバスで15分ほど。学芸員からここが日本初の常設競馬場であったことの歴史的背景を聞き、大人の拳よりも大きい江戸時代の馬の腸結石の特別展示、恐竜の絶滅後に登場した馬の祖先からの進化を示す模型展示などについても説明を聞いた。
このあと少し離れたポニーセンターで、馬房の外につながれた乗馬用のサラブレッドや北海道和種(ドサンコ)を間近に見た。センターには中央競馬の天皇賞を勝った馬を含め8種11頭が飼養されている。馬の日課や感情表現、人との意思疎通など多くの質問が出ていた。

