来年の世界遺産登録へ後押し 縄文フォーラム盛況

f:id:amullar:20200127180136j:plain

北日本の縄文遺跡群を世界遺産にと開かれたフォーラム

 北海道と青森県など北東北3県の縄文遺跡群を世界文化遺産に登録する動きを加速しようと、関係道県・市町でつくる世界遺産登録推進本部主催のフォーラムが1月25日、東京・有楽町で開かれた。

 

 遺跡群は日本最大級の集落跡の三内丸山遺跡青森市)など、いずれも国の特別史跡または史跡である17遺跡で構成される。

 

 政府は今月16日、推薦書を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出した。2013年から国内で予選落ちしていた挑戦は、これで審査の舞台を国際機関に移す。ユネスコの諮問機関イコモスの現地調査は9月にも始まり、来年夏の世界遺産委員会で登録の可否が決まる見通しだ。

 

 文化庁の西川英佑文化財調査官は「世界遺産登録と活用の最新情報」と題して講演。世界遺産委員会で近年議論されていることとして、(1)「自然」「複合」に比べて「文化遺産」偏重の改善(2)特定の国やヨーロッパ・北米地域に集中することの是正(3)宗教的モニュメントや歴史的都市など類型的なものが多いことへの反省―を紹介した。

 

 また専門家による助言機関が委員会に出す勧告は4段階あり、助言機関が「情報の追加が必要」などと勧告しても委員会は登録を決めるという「ずれ」も生じている。これは今回の縄文遺跡群のように、いくつもの遺跡や遺物をつなぎ一つのストーリーにして推薦したり、多様な価値を持つものが増えたりしたことで、意見が分かれやすいほか審査期間の短いことも影響しているという。

 

 水ノ江和同・同志社大文学部教授は「日本列島の縄文文化と『北海道・北東北』」のテーマで話し、縄文文化の総体を知るうえで日本列島のどの地域も不可欠としながらも、ユネスコに推薦した構成資産は縄文時代の始まりから終わりまでを含み、環状列石もあるなど「年代・種類がバランスよくまとまっている」と評価。

 

 縄文文化を代表する他の遺跡を追加して網羅するべきだとする意見に対しては否定的な見解を示した。推薦された遺産群がすべて史跡に指定され、研究成果をまとめた報告書も刊行されていることに加え、2006年から続く地域に根付いた取り組みであることを理由に挙げた。

 

 講演の最後に立った縄文遺跡群世界遺産登録推進会議の岡田康博座長は「ここまできた『北海道・北東北の縄文遺跡群』と最新情報」と題して話した。

 

 全容解明へ発掘調査の継続、遺跡の全体像が詳しくわかる総括報告書の刊行、ガイダンス施設の整備など遺跡を巡る最近の動きを紹介し、「この地域の遺跡群で、定住の開始・発展・成熟の過程を説明できる」。

 

 フォーラムへの参加は定員600人、先着順で募集されたが、応募期限を待たずに定員に達したといい、縄文人気の高さをうかがわせた。