武蔵野大学仏教文化研究所主催の公開講座が10月2日、武蔵野キャンパス(西東京市)であり、「韓国社会における仏教」と題して佐藤厚・東洋大学井上円了哲学センター客員研究員が話した。
佐藤氏は韓国仏教研究の第一人者とされ、約70人が参加した。
佐藤氏によると、韓国仏教は7~14世紀の統一新羅時代、高麗時代に隆盛を見せた。朝鮮時代に入ると儒教に押されたが、1910年からの植民地時代(日本の韓国併合)に日本の影響力で復活。
こうした歴史の中で、古代にあった諸宗派が朝鮮時代に統合され、禅宗を中心とした現在の主要な宗派(曹渓宗、太古宗)につながる。
とはいえ、韓国の調査では無宗教を含めた国民全体の4人に1人はキリスト教信者で、仏教の信者はプロテスタントよりも少ない。ちなみに国際調査では日本人は31%が仏教を信じ、キリスト教は1%という。
佐藤氏は、日本の仏教が先祖の供養や葬式が基本なのに対し、韓国仏教は「祈り」が中心と指摘。生活に関わる悩みごとを祈禱(きとう)によって解決しようとし、寺は祈禱の場となっている。
具体的な事例として大学入試のための母親たちの祈禱や、若い女性が五体投地のような動作を1万回以上繰り返したり、家族関係に悩む30代女性が寺で経を1万回読んだりする自己改善の修行の様子が映像で紹介された。
公開講座は今年度「世界の国々と仏教」を統一テーマに全6回予定されているが、新型コロナウイルスの影響で開催延期が続いていた。次回は「ミャンマー・出家者の世界」と題し10月23日午後2時30分から同キャンパスで。聴講無料。