「ばあちゃんがいた正月」 友人が国展に出品

日本最大級の公募展とされる第96回国展の展示会場

友人が出展した油彩「ばあちゃんがいた正月」

 5月15日、東京・六本木の国立新美術館に国展を見に行った。友人から「絵を出展している」と招待状をもらったからだ。

 

 同展は第96回ということだが、見たことはない。それどころか、彼が絵を描いていることを知らなかった。

 

 彼とは知り合ってから30年余り、年賀状のやりとりだけで細々縁がつながっていた。近年は添え書きがないときもあったので、この知らせはうれしかった。「国展」や主催する「国画会」をインターネットで調べた。

 

 国立新美術館は長蛇の列ができていて、一瞬驚いたが、これはメトロポリタン美術館展の入場待ちで、どんどん進むと国展の表示が見えた。

 

 受付で彼の作品の展示場所を聞き、絵画部の会場に入ったが、最終日の前日で日曜日なのにこちらは混雑と無縁で、鑑賞者はまばらな状態。

 

 それにしても会場は広い。作品はどれも大きく、全体で約600点に及ぶ。「日本最大級の公募展」とうたうのに納得する。

 

 彼は約120人の一般出品者の1人。作品は油彩でタイトルは「ばあちゃんがいた正月」。大きな丸いちゃぶ台の上におせち料理が並び、ばあちゃんは火鉢で餅を焼き、父親は手酌酒。背番号入りのシャツを着てお年玉の袋を手にしているのが少年時代の彼だろう。

 

 母親はかっぽう着姿でおわんを運び、子どもたちの傍らにはたことこま、羽子板と遊びの準備も怠りない。どこを見ても戦後昭和の家族の平和な元旦風景。ストーブのそばで眠る猫も幸せそうだ。

 

 作品を一緒に見てくれた主催者側の人は「細かいところまで表現され、楽しい雰囲気が伝わる。好感が持てる心象風景」と評した。私はうれしかった。でも、描かれた世界がうらやましかった。