「社会と学術つなぐ博物館を」 加藤教授講演

地域博物館の具体像などを話す加藤幸治・武蔵野美大教授

 西東京市の地域博物館を創(つく)ろう連合会と同市公民館共催の講演会が9月10日、保谷駅前公民館であり、「いまミュージアムをつくる―期待される役割と課題-」と題して、武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程教授の加藤幸治氏が話した。約30人が参加した。

 

 市内にはかつて日本初の民族学博物館があり、その収集物の多くが国立民族学博物館大阪府吹田市)に保管されていることや、国史跡に指定された縄文中期の下野谷(したのや)遺跡の遺物などの保存活用の場が不十分だとして、新しい形の博物館を整備する機運を高めようと文化団体が取り組んでいる。

 

 加藤氏は東日本大震災で大きな被害のあった宮城県石巻市牡鹿半島鮎川で復興のために実践してきた活動を紹介。牡鹿半島ビジターセンターは収蔵庫がなく学芸員もいない交流施設だが、「外部協力者の活動があるだけでも広い意味でミュージアム」という。

 

 戦前は捕鯨会社のパビリオンだった「おしかホエールランド」は商業捕鯨の伝統を踏まえながら、地域文化としてのクジラを再考したり、人と動物の新たな関係を考える材料を展示したりする場とした。

 

 加藤氏はこれからの博物館は「学芸員が頑張る」から「みんなのアイデアを結集する」への転換が必要と強調した。また名品・珍品を陳列する博物館に代わる学びのセンターとなる地域博物館とするために「ネットワーク」を重視。

 

 具体的には、学問的関心と地域住民の関心との接続▽企画を地域の人と一緒に行う協働▽施設内での活動と外に出るアウトリーチの複合▽文系と理系の成果を混ぜ合わせる共創▽動画配信、SNS、ローカルメディアによる発信-を挙げた。