11月9日、上野の東京都美術館で開催中の「展覧会 岡本太郎」(12月28日まで)を見に出かけた。岡本太郎を強く意識したのは人生3度目だ。
最初は大学生時代。自分が何者か、内向の年頃。著書「岡本太郎の眼」を買い、ずいぶん勇気づけられた。この本にだけ、感想をいっぱい書き込んだ記憶がある。
本の存在を思い出して、中古本を買ったのが定年退職して2年後。それから10年が過ぎ、後期高齢者が目の前に迫った今日このごろ、無性に展覧会を見たくなった。
ホームページで予備知識を仕入れることもなく、日時指定予約したQRチケットで入場。ちゅうちょなく音声ガイドの機器を600円で借りた。
会場は地階から2階までに、絵画や彫刻など約100点(映像を除く)が展示されている。最初期から最晩年までの代表作や重要な意味を持つ作品をそろえ、没後の回顧展として最大規模という。
彼の作品を直接見たのは渋谷駅の巨大壁画ぐらいしか思い当たらないが、最近の体力から音声ガイドの十数件に全集中することにした。語りは私の好きな俳優の阿部サダヲ。
とはいえ、ガイド番号の周囲の作品にも目が行く。強烈な赤や神秘的な青など印象的な色づかい、とげとげしい直線となまめかしい曲線、抽象の中に紛れ込んだ具象-。懐かしい気がする。立体作品の目玉がすべて空洞だとは音声ガイドで知った。
ほとんどの作品の写真撮影(フラッシュ禁止)が許されているのはありがたい。会場には若い女性の姿が目立ち、その多くがスマートフォンのカメラを向けていた。
岡本太郎は84歳で亡くなった。その前年に取り組み未完だったのが「雷人」だ。彼の没年まであと10年。これからもときどき励ましてもらって生きよう。