発見・想像を楽しむ 「日本美術の裏の裏」展

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江戸時代(19世紀)の雛道具に「小」をめでる

 「裏の裏」という謎めいたタイトルにひかれ、10月24日に東京・六本木のサントリー美術館を訪ねた。

 

 リニューアルオープンした同美術館と朝日新聞社主催の展覧会「日本美術の裏の裏」(9月30日~11月29日)。開催前に新聞社が1ページの紙面の3分の2を割き、見どころ紹介記事を掲載していたが、展覧会全体のコンセプトをいまひとつつかみきれないまま会場へ出向いた。

 

 展覧会は「空間をつくる」「小をめでる」「心でえがく」「景色をさがす」「和歌でわかる」「風景にはいる」の6章で構成。

 

 会場に入ってすぐ目に入るのは、円山応挙の「青楓瀑布図(せいふうばくふず)」。滝を描いた縦178センチ、横92センチの大作そのものを鑑賞するよりも、「空間をつくる」とどう結びつくのかを考え、もやもや感を抱えながら屏風や絵巻、ミニチュアサイズの雛(ひな)道具、陶器、浮世絵版画などの古美術を一通り見て回った。

 

 この日は同館の学芸員らの教育担当スタッフが展覧会の見どころを短時間で解説してくれる「鑑賞ガイド」がホールであり、ここで理解を深めて再度作品を味わうことにしていた。

 

 スタッフが話す各章の狙いはおおむね得心がいった。「応挙の滝」はどこに滝があったらよいかを自由に想像してもらい、仮想現実を楽しむ。小さいものは昔から無条件にかわいい。ヘタウマな絵にもじわじわと迫る魅力がある。

 

 焼き物は自分の好きな面を正面にして飾ればよい。和歌を知れば日本美術はもっと面白いことに気づく。点景の人物を見つけて風景の中に導いてもらい自分だけの物語をつくる。

 

 要は「見えない部分(裏)を知るだけでなく、様々な角度から日本美術の楽しみ方を探る」(スタッフ)のが全体テーマのようだ。

 

 作者や時代を軸に組み立てられ、名品をじっくりと味わう展覧会とは一味違った切り口で、裏技ともいうべき鑑賞法を見る人に提示する意欲的な企画。約60点の出品作品がすべてサントリー美術館の所蔵とあって写真撮影できるのもうれしい。