藤ノ木古墳 最新の研究成果を公開

橿原考古学研究所の専門家が藤ノ木古墳の研究成果を発表した会場

公園に整備された奈良県斑鳩町藤ノ木古墳

 奈良県橿原考古学研究所の東京公開講演会「大和の中の東アジア~藤ノ木古墳~」が11月27日、有楽町朝日ホールであり、約600人が最新の研究成果に聴き入った。

 

 斑鳩町藤ノ木古墳は6世紀後半に築かれた直径約50メートルの円墳。1988年に未盗掘の石室と家形石棺が調査され、精巧で豪華な金銅製馬具などの副葬品が大量に出土し脚光を浴びた。石棺内外の出土品は2004年に国宝に指定された。

 

 講演では、発掘調査を担った同研究所の前園実知雄・特別指導研究員が、2人の被葬者について、日本書紀の死亡記事や墳丘の形、被葬者の骨格、副葬品などから「蘇我氏に殺害された穴穂部皇子(あなほべのみこ)と翌日に殺された宅部皇子(やかべのみこ)と考えられる」と述べた。

 

 石棺内から出土した刀剣については、同研究所の水野敏典資料課長が講演。朝鮮半島由来とみられる装飾性の強い大刀にも日本の復古的なデザインが採用されており、被葬者が自身の立場の正統性を主張したと考えることができると話した。

 

 同研究所保存科学研究室の河﨑衣美・主任研究員は、2021年度から10年以上かけて出土品の再修理事業に取り組むとし、初年度に扱った銅鏡や刀身などの状態と修理内容を説明。「出土品一つ一つの個性に合わせて修理し、新たな知見への道筋をつけることで藤ノ木古墳を未来へつなぎたい」と締めくくった。