アニメで伝える「原爆の記」

 西東京シネマ倶楽部の「市民名画座」は5月27日、「忘れてはいけない記憶」と「Fukushima50(フクシマフィフティー)」を保谷こもれびホールで上映した。

 

 「忘れてはいけない記憶」は、太平洋戦争末期の1945年、米軍の空爆と目撃証言、犠牲になった人々の慰霊をする行事や記念碑などを収めた映像記録「西東京にもあった戦争」に、新たに「原爆の記」のアニメーションを加えた約45分の作品。

 

 西東京の戦災記録映像は何年か前に、「西東京平和の日」記念行事で見たことがあり、「原爆の記」も購入して読んだ。原爆の記がどうアニメ化されたのか、興味をそそられた。

 

 原爆の記を著した指田吾一は初代の旧田無市長。北海道から広島へ赴いた軍医・指田は任務中に原爆投下に遭遇。閃光(せんこう)、爆風、廃墟、やけど、死体の渦…。

 

 切り絵のような鋭角的な太い線で人物や景色が描かれる。棟方志功の版画が思い浮かんだ。絵の流れはパラパラ漫画をゆっくりとめくるようだ。1コマ1コマが訴える力を持つ。

 

 上映に先立ち、アニメ制作を監督した外村(とむら)史郎さんが舞台あいさつした。外村さんは2012年の西東京市民映画祭に出したアニメ作品が優秀作品賞を受けており、縁が深い。

 

 外村さんは「人類史上最悪の殺戮(さつりく)をアニメ化できる力が自分にあるか、葛藤した」と明かし、どこかの国を批判するのではなく、(作品によって)空襲という事実を伝え、その事実に目を向けてもらえるようになればよいのではないか、との思いに至ったと言う。

 

「原爆は一瞬にして幸せな日常を奪った。原爆資料館広島平和記念資料館)に足を運んで理解を深めてほしい」。外村さんはこう結んだ。