ヘルシンキの穏やかな日々 映画「かもめ食堂」

 三鷹市スポーツと文化財団の新しい映画企画が始まった。名画世界紀行に続くのは「料理が心を結ぶ、映画特集~あたたかな食事風景~」。

 

 その初回、『かもめ食堂』(2006年、荻上直子監督)が9月23日、三鷹市芸術文化センターで上映された。

 

 フィンランドの首都ヘルシンキにある日本人女性(小林聡美)が経営する小さな食堂が舞台。そこを訪れた日本オタクの現地青年をきっかけに日本人旅行客(片桐はいりもたいまさこ)が店を手伝うことになる。

 

 店主の日本食へのこだわりを尊重し、主張を譲らなかったり干渉し合ったりすることもなく、心が通い合っているような3人の女性。穏やかに進行する日々、それでいて三様の個性をのぞかせる演技が素晴らしい。

 

 脳血管の手術を控えて、いつ情緒不安定に陥るかとびくびくしている私にとって、感情を揺さぶられるシーンがないのは幸いだった。それでも時々クスッと声が出たし、まぶたがジワーッと熱くなった。

 

 全編フィンランドロケが行われ、店は現在も実在して人気があるというから、ヘルシンキの街並みや風景、店の食器類やテーブル、いす、照明などのインテリアが見られるのも楽しい。

 

 「料理映画」はこのあと来年3月までに、『今日も嫌がらせ弁当』『南極料理人』『土を喰(く)らう十二ヵ月』の3作品が予定されている。