共感と異世界と 映画「おじいちゃんの里帰り」

 名作の中で世界の旅も楽しめるという映画上映シリーズの第3弾『おじいちゃんの里帰り』を11月19日、三鷹市芸術文化センターで鑑賞した。

 

 舞台はドイツとトルコ。家族を連れてトルコの田舎町からドイツに移住し、45年間を過ごした「おじいちゃん」が、4人きょうだいの子どもと孫の大家族を引き連れ、車で故郷に向かう。

 

 おじいちゃんが若い時、ほれた彼女をどう射止めたか、異国ドイツで妻が初めて見た洋式トイレをめぐるドタバタ、大学生の孫娘の妊娠など、当事者には深刻な問題も、他人事として見ている者にとっては、身に覚えがあったりどこかで見聞きしたりしたことのある家族の小事件。回想シーンも今の生活にもほんわかした笑いを誘われる。

 

 現代の移民問題のような重苦しさはない。とにかく労働力不足で、おじいちゃんが若い頃は「ゲスト労働者」と呼ばれ歓迎された時代の話。それでも、異国では宗教や言語、慣習が違い、そもそも3世代が一緒に住むことは簡単ではないはずだ。それは所々にちりばめられているのだが、後を引かない展開になっていて疲れない。

 

 妻には時々頭が上がらないおじいちゃんに「うんうん」とうなずき、いざとなれば有無を言わせぬ求心力に脱帽する。訪れるトルコの田舎の岩と木々の風景は異世界

 

 観客はおじいちゃん少数、おばあちゃんが圧倒的に多かった。おじいちゃんにこそお薦めの映画だと思う。2011年の作品。101分。

MRI所見は異常なし 脳出血体験記

 脳出血の経過観察で1週間前に受けたMRI検査の結果報告が11月18日、武蔵野赤十字病院脳神経外科担当医からあった。

 

 画像を見て「傷はふさがっていますね」とおっしゃるが、前回の検査でわかっているし、その後、体に変わったことが起きているわけでもないから、患者側からは「そうですか」としか返す言葉はない。

 

 「何か聞きたいことはありますか」と言ってくれたが、「もう治ったと考えてよいですか」とは問えない。経過観察は当面続けなければならないことは容易に想像がつく。

 

 このままだと「3分診療で終わってしまう」と思い、傷痕はどうなっているのか発症当初の画像と最新の画像を見せてくれるようお願いした。

 

 当初の画像は出血部分が1円玉ほどの白い穴になっているが、今は薄黒く塗りつぶされていた。かさぶたとは違うが、「傷痕ではある」と言う。なんか、意味のなさそうなやりとり。

 

 「そういえば腎臓が悪かったですね」と思い出したように先生。「血液検査をやりましょう」と次回の来院日を決めた。なんか、内科の疾患みたい。

 

 診察していただいたという充足感を得られないまま、リハビリテーション科へ。脳の機能に障害を起こしていないかを調べるのはこちらの診療科。

 

 先週、MRI検査に先立ち、カードを使って集中力や総合的な判断力を点数化する、米国生まれのテストを言語聴覚士のもとで行い、結果に基づく所見と運転の適否は医師が下す。このとき、担当医に自動車教習所で受講する高齢者講習の結果を伝える約束をしていた。

 

 75歳以上の免許更新は高齢者講習と認知機能検査の両方を終了していないと更新手続きができない。認知機能検査の方は以前の診療の際、問題なかったことを口頭で伝えていたが、ブログで「日記」として書いてあったので出力し、高齢者講習の体験記と合わせて文書の形で担当医に手渡した。

 

 リハビリの担当医とは、「公安委員会の定めた手順通りに手続きを進め、来年更新が済んだ時点でまた話を聞かせてもらうことにしましょう」となった。

 

 ここでも診察や診断の実感が湧かない。それでも「3月で私の方は終わりにしましょう」との言葉をいただいた。だいぶ先ではあるが、病院通いの負担が少しは軽くなりそうだ。

雨中の収穫 農業講座

 11月15日の農業を知る講座は雨中の収穫作業となった。

 

 東京地方の雨は昼ごろまで続き寒さも厳しいとの予報。みんなカッパやポンチョを着込んでいた。さすがにいつもより参加者は少ない。

 

 収穫物は「どんと持ち帰って食べるのに困るより、少しずつ減らしていって」という先生の言葉に従い、ダイコンは1人2本。ニンジンと葉物は各班で相談して収穫量を決めた。

 

 ダイコンはどれも青首が地上に出ていて生育のよさがわかる。ホウレンソウ、春菊、小松菜は包丁で根元から切り取り、それぞれ2袋分程度を収穫した。

 

 ニンジンは、わが班は一般的な品種の「オランジェ」と、表皮が紫色がかった紅色でニンジン臭さがないという「京くれない」とも2本ずつとした。

 

 ニンジンは地中に隠れていて太り具合がわからない。「土が盛り上がって割れ目が見えるとよい」とリーダーが助言してくれたが、なかなか見つからない。茎葉が立派なものを選んだ。

 

 雨が降ると根や手袋についた泥が飛び散り、葉に付着してしまう。家でひと手間増えるなと思っていたが、実際の洗い作業では、根を洗う水が葉の土も洗い流してくれるので、心配したほどではなかった。

 

 雨は、畑を提供する先生の方にも気がかりがあったようだ。うね間を何人もが踏み歩くと土が固まり、作物の根に空気が十分行かなくなり、排水も悪くなってしまうという。先生が耕してくれることが多いだけに、手放しで収穫を喜んではいけないということだ。

75歳以上の免許更新 第2関門を通過

 11月12日、隣の東久留米市の自動車教習所で高齢者講習を受けた。これで運転免許更新の第2関門を通過した。

 

 第1関門の認知機能検査を10月に東京・府中試験場でパスした翌日、東久留米自動車教習所に高齢者講習の受講を予約した。府中で「混んでいるから急いで予約を」とせかされたのと、前回高齢者講習を受けて好感を持っていたので、迷わず選んだ。

 

 受講者は男女各4人の計8人。みなさん、認知機能検査を済ませていた。逆走やブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違えなど一定の違反もない。

 

 講習内容は実車指導、ビデオと折々の話(座学)、目の検査で合わせて2時間。受講料は6450円。

 

 車に乗る前にコースの説明や一時停止、信号通過時などの注意があった。長い直線コースでは時速30キロを出すこと、一時停止は完全に停止し車体が停止線を越えないこと、段差に乗り上げたらすかさず強くブレーキペダルを踏む――が特に強調された。

 

 車はマツダ車で運転席に1人、その後ろに1人、助手席に指導員が座る。私は運転1番目だった。もう3年以上車を運転していないから、シフトレバーの位置を指導員に教えてもらう。アクセルは少し踏み込んだだけで加速するから加減が難しい。

 

 右左折や時速30キロのタイミングは指導員が指示してくれるから慌てることはない。前回講習であったバックの車庫入れがないのもありがたい。バックモニター付きの車が増え、やる意味がなくなったとか。

 

 縁石乗り上げは実際にやるまで動作がわかりにくい。要するに、乗り上げた瞬間にガツンとブレーキペダルを踏み込んで止まればよいだけのこと。

 

 運転を私と交代した女性は踏み込みが甘く、タイヤが停止ラインを20センチほどオーバーした。指導員は経験上すぐわかったと言い、「車から降りて、その目で見てください」に「あら、ほんと」。

 

 講習だからチェックのみで点数はつけないが、検定ならば10点減点、指導員に補助ブレーキをかけられたら30点減点だそうだ。

 

 運転では注意らしいものは受けなかったが、目の検査ではいくつか不安が残った。左目の視野が少し狭い。左右の角度を足すと平均の150度ギリギリ。「首でも安全を確認するように」とのことだ。

 

 明るい所から暗い所に入って目が慣れる(視力が回復する)のに90秒かかり、判定は「劣っている」。しかし多くの人が60秒台~90秒で、「トンネルは早め点灯を」。

 

 動体視力は年齢的に「ふつう」だが、30~50代の平均よりもやや低い。「高速道路では車間距離を十分とるように」。

 

 目の検査結果は来週、武蔵野赤十字病院のリハビリ担当医に報告を求められている。来月は近所の眼科医院で視野検査をすることにもなっていて、目の健康に気をつけなければならない。

実りいろいろ 臨時収穫日 農業講座

カリフラワーを初収穫。育ちすぎのものもあり、「適期」の難しさを知る

 農業を知る講座は11月10日、畑で臨時の収穫作業を行った。収穫適期の作物が重なり、これまでで最多の6~7品目に上った。

 

 先生の指示はブロッコリーとカリフラワーは全部、キャベツは大きいもの、葉物のホウレンソウ、春菊、小松菜は生育具合に応じて各班が数量を判断、ダイコンは1本。

 

 このうち初物はカリフラワー、春菊、ダイコンの3品目。

 

 わが班は1人当たりブロッコリー1個、カリフラワー3個、葉物はそれぞれ約1袋分、ダイコンは自分の分を自分で選んで抜いた。キャベツは前週ほとんど取り終えたので今日はゼロ。

 

 ある班がニンジンを初収穫したのを見て、わが班で来週来られないという1人だけがニンジンを先行収穫した。先生の話では「ニンジンは来年2月まで収穫できます。毎回少しずつ持ち帰って」。

 

 収穫物のうちカリフラワーは日よけの葉をめくると生育が進み過ぎたものが散見された。わが班でも規格外?の5,6個を希望者に配分した。先生は「もう4~5日早ければよかった。我慢して調理してください」と残念がった。

岡本太郎の作品 勢ぞろい 都美術館

大阪万博で建てられた「太陽の塔」の50分の1の作品

渋谷駅に設置された幅30メートルの巨大壁画の下絵。幅は約11メートル

 11月9日、上野の東京都美術館で開催中の「展覧会 岡本太郎」(12月28日まで)を見に出かけた。岡本太郎を強く意識したのは人生3度目だ。

 

 最初は大学生時代。自分が何者か、内向の年頃。著書「岡本太郎の眼」を買い、ずいぶん勇気づけられた。この本にだけ、感想をいっぱい書き込んだ記憶がある。

 

 本の存在を思い出して、中古本を買ったのが定年退職して2年後。それから10年が過ぎ、後期高齢者が目の前に迫った今日このごろ、無性に展覧会を見たくなった。

 

 ホームページで予備知識を仕入れることもなく、日時指定予約したQRチケットで入場。ちゅうちょなく音声ガイドの機器を600円で借りた。

 

 会場は地階から2階までに、絵画や彫刻など約100点(映像を除く)が展示されている。最初期から最晩年までの代表作や重要な意味を持つ作品をそろえ、没後の回顧展として最大規模という。

 

 彼の作品を直接見たのは渋谷駅の巨大壁画ぐらいしか思い当たらないが、最近の体力から音声ガイドの十数件に全集中することにした。語りは私の好きな俳優の阿部サダヲ

 

 とはいえ、ガイド番号の周囲の作品にも目が行く。強烈な赤や神秘的な青など印象的な色づかい、とげとげしい直線となまめかしい曲線、抽象の中に紛れ込んだ具象-。懐かしい気がする。立体作品の目玉がすべて空洞だとは音声ガイドで知った。

 

 ほとんどの作品の写真撮影(フラッシュ禁止)が許されているのはありがたい。会場には若い女性の姿が目立ち、その多くがスマートフォンのカメラを向けていた。

 

 岡本太郎は84歳で亡くなった。その前年に取り組み未完だったのが「雷人」だ。彼の没年まであと10年。これからもときどき励ましてもらって生きよう。

農業振興 行政の取り組み 農業講座

キャベツ生産量は西東京市多摩地域で最多。講座でも作付け、収穫した=10月

 「農業を知る講座」は11月8日、行政が都市農業の振興とどう取り組んでいるかについて、西東京市の担当職員から聞いた。

 

 市内の農業は野菜、果樹、花き、植木を4本柱とし、中でもキャベツの生産量は多摩地域で1位。保谷梨はふるさと納税の返礼品などとしてブランド化を図っている。ただ、農地面積は約120ヘクタールで、多摩北部5市で最も少ない。

 

 農地面積はこの10年間で約2割減るなど年々減少、農家戸数は同期間で3割強減り2020年で187戸となった。

 

 農業施策は第2次市農業振興計画(2023年までの10年間)に基づいて行われており、農産物の売り込みのため、キャベツ頭のイメージキャラクター「めぐみちゃん」をあしらった直売所ののぼり旗、映像や音楽を流して農産物をPRするファームカーが紹介された。

 

 農業関連のイベントは今年度、「親子で野菜作りにチャレンジ」で初めてトウモロコシの種まきと収穫を行った。しかし、コロナ禍で景観散策会や緑のアカデミーなどは中止が続き、今後の展開に課題を残している。

 

 地場農産物を使った飲食物を店が提供する「めぐみちゃんメニュー事業」は今年度、小中学生からメニューを募集したところ、約3千件の応募があり、市内18店舗が100を超すメニューを商品化した。この秋は学校給食にも応募メニューが取り入れられたという。

 

 このほか農業後継者の獲得と育成、援農ボランティアの育成、市が開設する市民農園(3カ所)と農家が開設する市民農園(6カ所)・農業体験農園(5カ所)の違いなどが説明された。

 

 30年間営農すれば固定資産税の減免などの税制優遇がある「生産緑地」の指定が期限切れとなることから「2022問題」と呼ばれた制度変更は、「特定生産緑地」として10年延長される。直近のまとめでは市内の農地のうち90.3%が特定生産緑地に移行したという。

 

 農業を知る講座に畑を提供して実習指導する保谷隆司さんは、相続税を納付するため農地を売却し、現在は約40アールを一人で経営する。農産物の売り上げや手取り額を明らかにしたうえで、「作っていて楽しく、やりがいもある。売り上げ以上のいい仕事だと思っている」と農業愛を語った。