「市民に身近な都市農業」を考える 西東京でシンポジウム

イメージ 1
 西東京市の農業の未来を考えるシンポジウムが2月18日、コール田無で開かれた。農地の減少に歯止めをかけ、市民に身近な「農」としての活用法を探ろうと、昨年若手起業家や農業者らがつくった西東京農地保全協議会(岩崎智之会長)が主催した。
 練馬区や埼玉県入間市など市外からを含め約40人が参加。講演とパネル討論に熱心に聞き入った。
 基調講演は鈴村源太郎・東京農大准教授=写真右=が「『農』を通じた地域振興」と題して行った。鈴村さんは、日本経済が低成長期に入ると農業への価値観が大きく変わり、(1)農家への宿泊体験(2)農村ワーキングホリデー(3)援農ボランティア―が注目されてきたと指摘。参加者の特徴や農家・農村への経済効果など地域振興効果、受け入れに当たっての課題などを話した。
 イメージ 2パネル討論は「多様な人が関わる、都市における『農』の今とこれから」がテーマ。市の農業担当職員、農家がつくる営農計画に従って市民が利用する農業体験農園の園主、高齢者の総合相談窓口となっている地域包括支援センターの管理者、千葉・西船橋コマツナ専業農家のパネリスト4人が話し合った。
 市によると、市内の土地面積のうち農地(畑)は約1割で、280世帯が野菜、果樹、花、植木を栽培している。今年度まで3年間、東京都の補助金を活用して都市と農業が共生するまちづくり事業を展開し、市民と農業者の相互理解を深めるなどしてきた。現在策定を進めている第2次農業振興計画(10カ年)でも「交流」を施策の柱の一つとし、援農ボランティア養成の実技を市内で実施することを盛り込むという。
 体験農園を開設して今年で10年目という園主は「利用者は嫌いな野菜を食べられるようになったり、他の区画の人との交流が生まれたりしている。将来は自分用の畑も体験型にしたい」と話した。
 包括支援センターの人は、定年退職したあと自宅に引きこもる高齢男性が少なからずいる実態を紹介し、「農地を活用することで地域とのつながりを持てれば」。千葉の農家は体験農園に強い関心を示し、農業者仲間にこの日得た情報を伝えたいと語った。
 宅地化から農地を守ることについて会場から質問を受けた鈴村教授は、相続税の納税猶予など税制面で特典のある生産緑地制度を使うとよいとしたが、行政による農地買い取りは財政負担や事後の利用の公平性確保といった課題があると述べた。