人とモノ、居心地よい生活空間とは 深澤直人個展

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 世界で活躍するプロダクトデザイナー深澤直人さんの国内初の個展が東京・新橋のパナソニック汐留ミュージアムで開かれている=写真は最初の部屋。10月1日まで。

 タイトルは「AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展」。主催するミュージアムのあいさつ文は、「AMBIENT」は直訳すると「環境」だが、深澤さんはこの言葉を「周囲」や「雰囲気」と捉えていると紹介する。担当学芸員は9月8日のギャラリートークで、深澤さんが「ものを置いたときに、よい雰囲気になる空間をつくりたい」と話したことを補足した。

 会場は、最初の部屋が暗室風になっていて、ペンダントライトのいくつもの真ん丸の球体が明るい輪郭を見せている以外、テーブルやいす、家電、住宅設備など100点を超えるデザイン作品はすべて白い空間である部屋と廊下に配置されている。

 ひもを引くと音楽が流れる壁掛けCDプレーヤー、文字盤がのっぺらぼうでも12角形のフレームで時刻がわかる腕時計、角が取れ丸みを帯びた携帯電話、しゃもじ付き炊飯器などの代表作は時を越えてデザインや機能を楽しませてくれる。

 仕切り板が斜めに入った書棚、はしごのない滑り台は、その使い方に想像力を働かされる。ギャラリートークのあった日は、薄い手袋をつけて特別にイタリア製バスタブに触ることが許され、縁の内側の曲線を確かめる人が相次いだ。

 学芸員によるギャラリートークには約50人が詰めかけた。デザイン関係者が多いらしく、深澤さんを知らない人はほとんどいなかったが、作品群を見るだけでも楽しい。展示室はリビングやダイニングなどの居住空間に見立てて設計されており、疲労感もない。それはまさに深澤さんの術中にはまった証左だろうし、作家のことをもっと知りたいという興味をもかき立てるのではないか。(写真は左から、内側が魅力的な曲面のバスタブ、機能美を感じさせるキッチン)
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