「天平の世」に迫る多彩な講演 興福寺中金堂再建を記念

イメージ 1 奈良・興福寺の中金堂が10月、300年ぶりに再建されるのを記念する東京講座(興福寺など主催)が629日、文化学園文化服装学院(渋谷区代々木3)であり、講演などを通して約500人が創建時の天平文化にイメージをはせた=写真は光明皇后の衣装を説明する里中満智子さん。

 興福寺藤原京から平城京に遷都した710(和銅3)年に藤原不比等が氏寺として創建。中金堂は三つあった金堂の中核施設で、寺の失火や戦火により7回焼失した。このうち6回は元の場所に再建されたが、江戸時代の焼失後は仮堂でしのいできた。創建当時への復元工事は2009年に始まった。

 講座は「天平人の祈り~蘇(よみがえ)る天平建築がつむぐ未来~」がテーマ。第1部で興福寺多川俊映貫首(かんす)と瀧川寺社建築の國樹(くにき)彰・再建現場所長、第2部で漫画家の里中満智子さんと仏像の制作技法などに詳しい山崎隆之・愛知県立芸術大名誉教授が講演した。

 多川貫首は、過去に焼けただれた基壇が何度も使われたことから、「天平への回帰」がいつの時代でもの再建のテーマだったと言い、今回の再建も「境内に入れば天平の時代が感じられる」と語った。また、天平時代のイメージを「端正、典雅、剛勁(ごうけい)」の三語で表現した。

 國樹さんは、復元のための資料がそろっていたことや、天井を下げたり、外から見ると窓だが内側は壁にして耐震性を高めたりする構造にしたことを明らかにしたが、「一般の人にはわからないと思います」。

 二人の講演の後、文化服装学院の学生をモデルに貴族や仏像をモチーフにしたファッションショーがあり、参加者の目を楽しませた。

 第2部では里中さんが光明皇后孝謙天皇の母娘を中心に取り巻く人物の相関図を解説しながら、仏教にのっとった政策を進め仏教文化を残したと評価。光明皇后に見立てたモデルの服飾などについても説明した。

 山崎さんは仏像の種類と形について話した後、学生に1枚の布を巻き付けて袈裟(けさ)姿の如来に仕立てたほか、布製のよろいや小道具を使って不動明王毘沙門天などに変身させ、仏像への理解を衣装の側面から助けた。(下の写真は袈裟の着け方を実演する山崎名誉教授、学生たちによるファッションショー)
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