自然の風景そのまま「博物館」 狭山丘陵北西部を歩く

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水田が復元されている糀谷八幡湿地

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水田跡にアシが生い茂る大谷戸湿地

 北多摩自然環境連絡会の今年度第1回の観察活動が4月28日、埼玉県入間・所沢両市にまたがる狭山丘陵であった。

 

 西武池袋線小手指駅南口から宮寺西行きの西武バスに乗り、糀谷(こうじや)バス停で下車。森や生きものなどの自然そのものを展示物とする「さいたま緑の森博物館」を巡り、同じ路線の堀之内バス停から小手指駅に戻る、徒歩区間約5キロのコース。

 

 新型コロナウイルスの感染防止を考えて講師の豊福正己さんが行程を作り、6人が参加した。

 

 糀谷バス停から少し先を左折し、なだらかな坂を上ると八幡神社があり、境内を下りると、そこはもう「博物館」区域の八幡湿地だ。スギの枯れ葉で作られたトトロが駐車場の隅で出迎える。

 

 湿地は、雑木林の下で一部が水田に復元され、里山の風景を再現している。湿地の外周を回り、案内標識に従って森の細道を大谷戸湿地方面へ。

 

 クヌギやコナラの若葉は曇り空の下でも森の中を明るく見せており、ウグイスなど野鳥のさえずりはさえて聞こえる。

 

 丘陵の自然そのものが博物館とはいえ、休憩所や展示室(多目的室)を備えた施設が「案内所」という名前で建てられている。ここで弁当を食べ、すぐそばの大谷戸湿地を一周した。

 

 途中、トンボの湿地は、シオカラトンボより少し小さいシオヤトンボや大型のヤンマが飛び交う。大谷戸湿地には水田は復元されておらず、若いアシが生え放題になっていた。

 

 いったん狭山湖外周道路に出て、別の車道を比良の丘へ向かう。この丘は所沢市で標高が最も高く、155メートル。頂上付近に木が1本だけ立っていて、ウワミズザクラだという。「『ウワズミ』と間違えそう」などとしゃべりながら、樹下のベンチで一休み。

 

 ウワミズザクラは、葉の形こそサクラだが、白い花を集めた花序はコップを洗うブラシのよう。花の盛りは過ぎていたが、まだ元気な花序があり、私もカメラを向けた。

 

 比良の丘からは金仙寺(こんせんじ)、中氷川神社に立ち寄った。金仙寺の境内では、満開の時期ならさぞかしと思わせる樹齢約150年というしだれ桜を見上げた。

 

 サクラの季節は過ぎても、森のあちこちでヤマツツジヤマフジが花を咲かせ、案内所近辺ではニリンソウカントウタンポポが群生して咲き誇っていた。期待以上の癒やしをもらい、生命のたくましさをあらためて教わる一日となった。