五輪、コロナも笑いの枕 白酒・兼好二人会

 桃月庵白酒三遊亭兼好の二人会(5月16日、三鷹市芸術文化センター)を楽しんだ。二人の高座を見るのは初めて。声の通りが素晴らしく、それだけで安心して噺(はなし)にのめりこめた。

 

 1席目は白酒が先番。東京五輪の開催をめぐる賛否の動きに「どうでもいい」と距離感を見せ、「噺家だって、江戸時代からあってもなくてもよかった」。

 

 このへんのマクラから演目を推察できるのはかなりの落語愛好家だろう。噺家という「商売」から昔の運送業につなげ、みそだるを載せて逃げ出した馬を馬方が捜す「馬の田楽」へと滑り込んでいく。

 

 噺家はふだんからよく笑い、高座で失敗しても反省しない。兼好はこんな楽屋話を交えながら、だから噺家はストレスがなく、免疫力も高まるので新型コロナにかかっても重症化しないと笑わせる。

 

 お気楽さは、いくつかの伏線を経て本編「ちりとてちん」へ。旦那の誕生日のごちそうの一つ一つをほめちぎり、お世辞たらたらで食べる男。次に招かれた男は、何もかもに「本場に住んでいた」とうんちくを傾ける。この知ったか男、仕組まれたとは知らずついには腐った豆腐を食べるが、もだえ苦しむさままで一連の飲み食べる表情としぐさは「見せる芸」として高い熱量を放っていた。

 

 中入り後の2席目は兼好が横浜のニシキヘビ騒動をマクラに「蛇含草(じゃがんそう)」。白酒は、芝居好きの小僧が仕事をさぼって芝居見物をし、お仕置きで蔵に閉じ込められる「四段目」を演じた。

 

 白酒の四段目は、忠臣蔵の四段目の内容を知らなかったことから語りについていけず、オチの爆笑に加われなかった。それでも、何列か前の男性の広い背中が笑いで大きく揺れ動いているのを見て、きょう1日の満足感を覚えた。