毎日新聞旅行の「重要文化財の富士塚めぐり」が12月16日にあり、15人が参加した。
最初の富士塚は江古田浅間神社の江古田富士(練馬区)。西武池袋線江古田駅北口のエスカレーターを下りると、道路の向こうにすぐ鳥居が構える。富士塚は小ぢんまりした拝殿の後ろにあり、拝殿の右側から登る。
江戸時代後期の天保年間に、地元の富士講の人たちが富士山から持ち帰った溶岩を積み上げて造った。高さは約8メートル。
当時築造され、ほぼ完全な形で残っているのは、都内ではここと次に行く長崎富士浅間神社の豊島長崎富士(豊島区)と、今回のルートにない小野手照崎神社の坂本富士(台東区)の3カ所だけとされ、いずれも国指定の重要有形民俗文化財となっている。
文化財保護のため、江古田富士に登れるのは正月三が日と山開きの7月1日、9月の第2土・日曜に限られる。登山口からは木々が生い茂っていて山の姿が見えない。ガイドに拝殿の左に案内され、山頂に小さな祠(ほこら)を見ることができた。
豊島長崎の富士塚も高さは約8メートルで表面が富士山の溶岩で覆われている。頂上の大日如来坐像など約50の石造物で構成され、富士信仰の強さを示すという。
ここも普段は登れず、毎年7月初旬の土・日曜の山開きのときだけ登れる。
最後に訪れたのは池袋氷川神社の池袋富士。社殿左に1912(明治45)年に築かれた高さ約5メートルの富士塚がある。草木の生えていない荒々しい「山容」を見せる。
豊島区指定の史跡で、7月1日のお山開きにしか登れない。入り口には社務所名で「お山にのぼらないでください」の看板が立っていたが、誰かが頂上付近にほとんど岩と同化した猫を発見。猫は寝そべって下界の人間たちを見下ろし、幾度か鳴き声を聞かせて存在を主張した。「字が読めないからいいね」という声に笑いが起き、和やかな雰囲気に包まれた。
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江古田の富士塚から始まったツアーはJR埼京線板橋駅近くの近藤勇と新選組隊士供養塔(北区)まで約5キロの行程。
能満寺(練馬区)の紅葉、祥雲寺にある漫画家・石ノ森章太郎の墓(豊島区)、推理小説家・江戸川乱歩の邸宅と土蔵、立教大学池袋キャンパスとチャペル内部、繁華街のオアシス・池袋の森など、富士塚以外にも見どころが多かった。
旅行代金は昼食付きで当初8800円だったが、都の観光支援事業「もっとTokyo」の適用で2500円が割引された。