「誰も自殺に追い込まれることのない社会へ」と題する自殺防止講演会が10月13日、西東京市役所田無庁舎であり、市民約30人が聞き入った。
講師は、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」副代表の松谷慶子さん。松谷さんは12歳のときに父親を亡くし、昨年の東日本大震災でふるさと気仙沼に大勢の犠牲者が出たことなどから今春、朝日新聞記者を辞めてNPOでの活動に転じたという。
日本の自殺者数は14年連続で年間3万人を超えている。松谷さんは、3万人という数が東京マラソンの参加者と同じであると説明し、昨年のマラソン大会のスタートからビルの谷間を埋めてあとからあとから繰り出す選手たちの波をビデオで見せた。
自殺の背景には60の要因があり、そのいくつかが複雑に絡み合っていることが、ライフリンクの調査でわかってきた。例えば、失業は非正規雇用につながり、やがて生活苦に陥ってうつ病や負債に押しつぶされ、最後は自殺に至る。失業、精神疾患などそれぞれの段階で相談窓口などの支援策はあるが、「点」に終わっていることが問題だと松谷さんは指摘した。
また、自殺者の7割強は亡くなる前に専門機関に相談し、そのうちの半数近くが亡くなる1カ月以内に相談していたことから、「死ぬ直前まで生きる道を探していた」として足立区の取り組みを示しながら、情報共有をはじめとする支援機関の連携を強く求めた。