最期を自宅で迎えるとはどういうことなのか。本人の望み、家族の協力、訪問診療の現実や地域のあるべきケアシステムは――。西東京市の市民活動団体が当事者たちに取材し、「在宅で生きる」をテーマに特集した地域情報紙「きらっと☆シニア」(A4判、4ページ)が5月17日、発行された。
記事の最後になってわかるのだが、取材を受けた19日後に、石井さんは帰らぬ人となった。医師の告知からだと約5カ月の生だった。
記事には、生きることに期限を付けられた時の心境から、在宅療養を決断した理由、帰宅後の日常などが語られ、近所の人たちの生活支援と、同居してくれるようになった娘夫婦ら家族の存在が大きな励みになっていることが読み取れる。
取材したスタッフによると、石井さんの死去が知らされたのは紙面を印刷する日の2日前。「紙面を見てもらえず、非常に残念です」と話す。
2面では、地方での一人暮らしをやめ、娘夫婦と同居する母親と、長く母親を自宅で介護し、最期をみとった息子(58)の2人を、それぞれの立場で紹介している。
前者の母親は2年前に直腸がんの手術を東京で受け、現在90歳。後者の母親は認知症が進み、6年間の介護のかいなく昨年92歳で亡くなった。後者の男性も実名で登場し、「利用できるものは何でも利用して介護疲れにならないように」と語る。
こうした高齢の患者や家族を支える社会的な仕組みはどうなっているのか。3面で「在宅療養の今」を、訪問診療にも携わる医師の金子秀平さんに聞いている。
金子さんは、訪問診療を行っているのは市内の開業医の約4割にとどまり、多忙や人手不足など多くの課題を抱えていることを明かす。そこで、行政や地域住民、都市再生機構(UR)などを巻き込んだ「サロン」を立ち上げ、地域のケアシステムづくりへ一歩を踏み出した。
特集テーマと離れる終面(4面)には「やってみました」と題するコーナーが新設され、農業体験農園の実り多かった1年を楽しく読ませる。